昨年(2017年)9月に日本学術会議が、「報告 子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題─現在の科学的知見を福島で生かすために─」を公開したのをご存じでしょうか。私も毎日新聞のあるコラムを見なければ、気が付きませんでした。そのコラムにも「新聞でいえば、福島の地方紙以外は全国紙の福島版とデジタル版で一部報道された程度」とあるように、ほとんど知られていないと思います。そんな状況なので、その報告書を少し紹介したいと思います。

(以下、報告書の一部を要約します。文章が難しいのですが、意味が変わってもいけないので、原文のまま引用します)

この報告書は、放射線感受性が成人より高いと言われる「子ども」と「放射線」について数多くの議論がなされているなか、①子どもを対象とした放射線の健康影響や線量評価に関する科学的知見の整理、②事故後数年の間に明らかになった健康影響に関するデータとその社会の受け止め方の分析を行い、保健医療関係者に向けた将来の「提言」の取りまとめに繋げることを目的としています。

①については、国連科学委員会の報告を取り上げ、「将来のがん統計において事故による放射線被ばくに起因し得る有意な変化がみられるとは予測されない、また先天性異常や遺伝性影響はみられない」としている一方、「甲状腺がんについては、最も高い被ばくを受けたと推定される子どもの集団については理論上ではあるが、そのリスクが増加する可能性がある」としています。

②については、「2016年12月末日までに約 30 万人の子どもが甲状腺超音波検査を受診し、185人が甲状腺がんの悪性ないし悪性疑いと判定され、このうち146 人が手術を受けたという数値が発表されている」というテータを取り上げ、この数値の解釈をめぐりさまざまな意見が報道され、社会の不安を増幅したこと、放射線の影響の有無について相対立する見解があることが紹介されています。「この論争が決着するには、甲状腺検査を継続して、経時的変化から判断するか、福島県以外の県で 同規模の同様の甲状腺検査を実施して比較する方法が考えられる。現状では前者が現実的との考えが有力である。」とのことです。

そして次のように「提言」されています。

「福島原発事故による低線量放射線被ばくを原因とした子どもの健康リスクをより正確に評価するには、子どもに特化した線量評価や影響評価研究の実施が必要である」

「集団の健康リスクを科学的に解析し、放射線との関連性が否定されたとしても、患者個人やその家族は、病因が不明であることや不平等感から、釈然としない思いを抱くであろう。すなわち、小児がんに特有な親子問題にも配慮し、こうした患者や家族の気持ちに寄り添うスキルを、小児がん治療に関わる医療関係者から学ぶ必要がある。」

ここからは私の感想ですが、福島原発事故から7年経って、原発の廃炉作業もこれから長期に続く課題ですが、被ばくした子どもの健康に対する不安やそれに対する心のケアも忘れてはいけない課題のように思います。もちろん医療関係者の方の努力が大きいと思うのですが、私たちも不安を煽ったりしない、心を傷つけるようなことをしないよう努力すべきだと思います。

報告書の全文が下のリンクにありますので、よかったら読んでみてください。

参考:
日本学術会議「報告 子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題─現在の科学的知見を福島で生かすために─」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-h170901.pdf
毎日新聞「坂村健の目 被ばく影響、科学界の結論」
https://mainichi.jp/articles/20170921/ddm/016/070/003000c