【この記事は私が編集している広報誌からの転載です】

テラ図2

人工衛星が測定したグリーンランド全体の氷床質量の 変化(Courtesy of the National Snow and Ice Data Center, University of Colorado, Boulder)

地球温暖化に伴って、グリーンランドの氷床(陸地の上に積もった氷)が溶け出している、それが原因で海面上昇が起こっているというニュースをよく耳にします。では、グリーンランドの氷床が溶けて減少している証拠はどこにあるの?という疑問が湧いてきませんか。氷床が溶けて、川になって流れている映像を見せられても、それは夏の一時期の話ではとの疑いも出てきます。今回はその証拠について紹介したいと思います。

米国とドイツが共同で打ち上げたグレイス(GRACE)という人工衛星があります。この人工衛星は、地球の引力(重力場)を正確に測る能力を持っています。人工衛星がグリーンランドの上を通過したとき、氷床があると、その重さ分だけ引力が強くなります。ずっと引力を測り続けていると、氷床の重さの変化が分かるわけです。氷床の質量が増えていると引力が強くなり、減っていると引力が小さくなります。そして測定した結果が右の図になります。2002年4月からの氷床全体の質量の変化が示されています。数字がマイナス、右肩下がりなので、氷床は減少傾向にあることが分かります。それからギザギザしていることが分かります。これは、9月から5月にかけては降雪により氷床が増え、6月と7月には溶けて少なくなるからです。2012年のように夏に大量に氷が溶けた年もあり、翌年の2013年のようにほとんど氷が溶けなかった年もあります。でも長い期間で見ると氷床は減っているというのが真実です。その年だけの増減を議論しても意味がないのです。まだ発表はされていませんが、今年は冬期の降雪が多かったため、夏の減少を上回って、正味、氷床が増えるかもしれません。そのニュースを聞いて、「地球温暖化はウソだった」、「氷河期が来る」と考えるのは間違っています。長い目で見ると、確実にグリーンランドの氷床は溶けて、減っています。これが地球温暖化の影響です。

さて、溶けた氷床は水になって、海に流れ出ていきます。年間平均約3千億トンの氷床が溶けることで、海水面は0.8ミリメートル上昇しています。1年で見ると小さな数字ですが、10年で8ミリメートル、100年で8センチメートルになります。放っておくと私たちの生活にも何らかの影響が出てくるでしょう。